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最終結果公表!盛岡・北上川左岸側開運橋袂エリア再整備デザインコンペの審査結果を発表します

12月19日金曜日に、盛岡・北上川左岸側開運橋袂エリア再整備デザインコンペ (通称:開運橋コンペ)の二次審査会を実施し、既報の通り、一次審査を通過した5者のうち、3者が二次審査へ進出し、盛岡市内で開催した審査会へ現地参加してくださいました。
これをもって、各賞の選定が終わりましたので、結果を公表するとともに、受賞者には年明けに賞金を授与します。
※入選作品の掲載は順不同、入選者は法人格および敬称を省略しています

二次審査の結果および優秀賞について

最優秀賞 該当者なし
本コンペは事業化を目的としたものですが、今後基本構想及び基本計画の策定を進める上で、直ちにパートナーとしての参画をお願いしたいと思える提案がなかったため、最優秀賞の選定には至りませんでしたが、優秀賞を3作品選び、順位づけを行いました。なお、優秀賞(第1位)の提案者には最優秀賞同等の賞金を授与します。
二次審査に進出された皆さまとの個別対話も想定しながら、今後の進め方について協議します。

優秀賞(第1位)
まちの小さな魅力をハイライトに残す、道と広場
◎園田慎二(園田慎二建築設計事務所)

 小高ちひろ(DEW STUDIO 一級建築士事務所)

【審査講評】
整備の経済性や街区内を歩行者専用私道で分割する考え方や、町側を向いた配置計画により創出される価値を高く評価しました。
その中で、建築家は「参謀」という立場の位置付けと、その役割についても、地域外からの参画であることを踏まえて納得感がありましたし、開発主体をはじめとする、プロジェクトに関わる盛岡側のメンバーもしっかりと汗をかいて、共同していかなくてはならないということを、自戒的に受け止めました。
一方で、提案されている各種機能の事業性については、協議・検討の余地があると思います。提案者の「収益を最大化するのではなく、プラスマイナスゼロを目指すべきであり、人的ネットワークの構築を価値と捉えるべき」というお考えには、総論としては賛成しますが、主催者はすでに別で収益のある商業施設を近傍で運営している実績もあり、本事業を実施する目的の一つには、民間主体でしっかりと収益の上がる事業を展開し、地域のモノ、コト、トキ、エン、イミの消費需要を満たしながら、地域雇用等に寄与することがあるため、構想段階では収支プラマイゼロを目指すのではなく、目標を高く掲げ、しかるべき着地点を探るアプローチでの推進を想定しています。
この思想の違いを埋めることと、提案のブラッシュアップには一定のコミュニケーションが必要であり、提案の採用如何はその対話次第であることから、入選作品の中で審査会の評価が一番高かったものの、優秀賞(最高位)として選定しました。
今後、提案の実現に向けた前向きな修正がなされ、事業の実現案として本提案が育っていくことを期待する声が、審査員からも上がっています。

優秀賞(第2位)
Morioka Media Mix
中居真一、中居佑介(中居都市建築設計)

【審査講評】
良くも悪くもホテルを一棟建てるというシンプルな提案で、機能及び空間の有効活用という点では、当初、主催者が思い描いていた内容に一番近い提案でした。
プレゼンテーションボード上のアウトプットは情報が少なすぎると思いますが、二次審査会の口述内容により、足りない部分がある程度捕捉されており、設備や構造を踏まえ、事業費の提案確度に一定程度の安心感がありました。
一方で、本コンペはデザインコンペと銘打っていますが、単に建築の意匠と機能を問うものではなく、募集要項に記載のとおり、提示した再整備のコンセプトの解き方を期待したものであり、例えば検討体制の中に、ランドスケープの専門家、コミュニティデザインの専門家なども加え、導入機能、推進体制、全提案者の中で最も高額な総事業費を回収する手段などに、具体的な提案があると良かったと思います。

優秀賞(第3位)
風が運び、土が生む morioka 1-1 BANCHI
畠田恵(スタジオハタケランドスケープ) 
 吉武駿(信州大学農学部ランドスケープ・プランニング共同研究講座)
 高梨日出夫(中央復建コンサルタンツ)
 香川翔勲(トベアーキテクト)

【審査講評】
再整備コンセプトの読み解きと、そこから提案に結びつける論理展開は、提出作品の中で随一であり、提案内容も重厚かつ緻密で、空間構成についても、余白や接点の作り方に目を見張るものがありました。
企業の従業員、起業家、学生の創造性を持って連携する場の機能も、概念としては一つの理想形に当たるのかもしれません。
一方で、民間主体による開発の場合、利回りやキャッシュフローを勘案すれば、入居者の先付けは必須です。仮に、上位ビジョンや上位計画に基づく自治体の基幹的事業であれば、整備した後に入居する起業家を募り、入居率が芳しくない場合にはソフト支援(起業助成金など)を上乗せして、何がなんでも空室を埋めるべく、政策連携によって達成することも(頑張れば)可能ですが、民間主体にとっては決して容易ではありません。また、市(官)や大学(学)を介して転貸借する方法を取るとしても、官と学に対して上記したような「事業を成立させるためのプラスαの工夫」を強いることになります。
そのように、機能導入に向けてゼロ地点から、官 or 学→民ではなく、民→官 or 学で提案して形にする意思決定のプロセスについて、官民連携の中枢にいる人間からすると、数十億円投資するリスクを負って、その実現に時間や労力をかけることを、肯定的に想像することができませんでした。
さらに、ある種、限定的なコミュニティである上階の機能に対し、屋外空間や下駄履の収益施設に、どれだけ外部からの利用を取り込めるかという、不動産開発・運営の観点からの不安もあり、この評価となりました。

入選作品について

一次審査の結果で佳作に選ばれた2作品について再掲します。

佳作
アワイモリオカ モリオカアワイ
◎片島徹、吉田葵、小野寺美咲(ケイズクリエイツ)
 釜田翼(studio ktm)
 駿河友弘(TOMOStudio)
 藤田幹雄(3unny scape)

【審査員講評】
アイソメをメインで見せるという表現技法によって、伝えたいことが伝わり、目を見張るものがありました。提案の中身に関して、整形の中に造形的にも機能的にも、多種多様な空間(あわい)が広がるというイメージはとても興味深いものですが、一方で、対岸から見た時のダイナミズム、テラス最上階の余白などを考慮すると、上階の規模をシュリンクしても良かったのではないでしょうか?通空の空間にあっては、冬場の状況にも懸念が残りました。次に、ホテルに関して、学生のパンションとのデュアル展開には優良事例もあり、一つのあり方として認められますが、シングルルーム主体のビジネスホテルは盛岡市内・エリア内に競合が多く、既存ホテルの稼働率を見てもブルーオーシャンといえる状況ではありません。ナショナルチェーンと比べてサービス優位になれるイメージも湧かず、事業性の面で不安がありました。なお、仮にミドルクラスのホテルを提案した場合は、パンション展開との相性が悪くなるため、全体の機能ありきでご提案いただいた中では致し方ないものであると理解しています。

佳作
盛岡ならではのモノでつくるアーツクラフトノード / 川辺を活かしたウォーカブルな立体テラス
◎清水襟子(清水・成澤デザインチーム清水襟子建築設計事務所)
 成澤佳佑(清水・成澤デザインチーム/成澤佳佑建築設計事務所)

【審査員講評】
デザインコードやモバイルファニチャーなど、細部にも有用かつ盛岡らしい、非常に興味深い要素が多くありました。空間とアクティビティがセットで提案されており、運営のイメージも湧きやすい提案でした。一方で「アート」という象徴的で少し茫漠としたテーマを取り扱うのは本当に難しいですね。内包する機能、実現のためのプロセスにはもう少しだけ具体化が欲しかったと思います。空間面でいえば、前面道路と対象地とがシームレスな空間になるのは良いと思いますが、GLの屋外空間が若干無機質な印象であり、建物のエッジで切り取られているような印象を与えてしまうのは、もったいないと思いました。

企業賞および特別賞について

既報の通り、盛岡の中心市街地にて、活性化やまちづくりに携わる企業等より、それぞれの視点から特別賞を選定していただきました。

企業賞 株式会社佐藤興産賞
HIBI no TAMOTO | 日々の袂
◎小林徹平(風景屋)

【選定理由】
場所性を踏まえ「まちのシンボルとなり得る提案」という視点で選考しました。
高さやボリューム、メイン機能により、大胆に存在感を示すという作品があまり見られなかった中で、本作品はアクティビティをメインに提案されており、時間をかけて価値が付与されていき、エリアのシンボルになる可能性ーーここでいう可能性とは「機会」を積み重ねる余地であり、実際に形にするには運営側に応分の努力が求められるがーーを感じました。
木伏緑地の向かい側にあって、同じことを同じようにしても意味がないので、余地や余白をどう演出するか、これから主催者とともに考えていきたいと思います。

企業賞 三田農林株式会社賞
ポラーノのハコニワ
◎匿名
※受賞者の希望により、匿名とさせていただきます

【選定理由】
スロープ上の壁が折れながら、上に続くプランが印象に残りました。
林業に携わる立場として、グリーンが多い提案であったことを高く評価しました。
また、リノベーションによる開発をいくつか手掛ける身からすると、岩手自動車販売の本社の中をスロープを通し、本社のそのまま残すのも面白いのではないかと思いましたし、真ん中に劇場が乗っていますが、さらに上に3層くらいホテルを積んでも良いのかなと思いました。
といったように、開発者の目線から見た場合、デザインコンぺの提案をそのまま形にするというのは難しいですが、設計者と施主の間で新たなアイデアが引き出される「ベースの提案」はどれかと考えた時に、本作品が一番印象に残りました。

企業賞 株式会社盛岡Club Change賞
Morioka Media Mix
中居真一、中居佑介(中居都市建築設計)
※優秀作品のため、作品画像は割愛します

【選定理由】
当社としては、一番完成度が高いと感じました。
良い点としては、デザインと収益性、集客力、大屋根による冬場対策。
改善点としては、建設費用が高いこと、事業者の誘致が不透明なこと、場所性を踏まえたコンセプトでしょうか。

特別賞 地域力創造アドバイザー 臂徹賞
暮らしを繋げる子育ての丘
◎本田耕(HAFEN)

【選定理由】
まちの開発にも携わる身として、極力既設棟を活かしながら商業ボリュームや非商業床を確保し、平面駐車場で付帯コストを抑える考え方と、全作品の中で一番、具体的なレントロールが示されていたところを高く評価しました。
リーシングおよび、機能の組み合わせによる新しいモノゴトの創出には、相当に運営側の労力が求められますが、そのくらいしないと地方の中核都市での開発は難しいとも思います。
何より、私は子育て当事者であるとともに、子育て中のママさんたちがスキルや経験を活かし、活躍する会社も運営しているため、このくらい子育てに振り切った開発が世の中にあってもいいと思いました。

用件定義が少ない中で、たくさんのご応募と、様々なアイデアをお寄せいただき、本当にありがとうございました!

二次審査会の審査委員について

一次審査を担った3名の審査委員に加え、ファイナンス(財務)とデベロップメント(開発)の専門家を招聘し、5名体制で実施しました。
 審査委員長 岩手自動車販売株式会社代表取締役 山田 康夫
 審査委員  弘前大学教育学部特任教授 北原 啓司
 審査委員  総務省地域力創造アドバイザー 臂 徹  
 審査委員 智創税理士法人盛岡事務所代表 楢山 直樹
 審査委員 大和リース株式会社岩手支店流通建築リース営業所長 西村 宗大