岩手県盛岡市は2023年ニューヨークタイムズ紙の「今行くべき52ヶ所」に選出され、内外の注目を集めました。 そのような中、都市計画行政が推進するコンパクトシティ化に向けた取り組みや、「人中心」の施策方向性と、中心市街地の内丸地区再整備の検討、マンション建設問題などを契機として、まちづくりに対する民間の機運も高まりつつあります。
今年度より、マチビトキタルメンバーの臂と、上條・福島都市設計事務所の福島氏とが連携し、盛岡らしい景観の保全と都市機能確保の両立に向け、今後の公共施設の整備や民間開発を適切な方向に誘導するため、中心市街地全体および個別エリアのまちづくりに関する与件を整理するとともに、都市計画マスタープランと個別計画とをつなぎつつ、実現性や持続可能性を勘案した都市整備のビジョン(=盛岡市中心市街地デザイン戦略)の素案検討を支援する業務(盛岡市)を担っています。
本業務はいわゆる「コンサル業務」とは異なり、真に中心市街地のあり方から見つめ直す盛岡市の姿勢を民間に伝えるとともに、民間側に積年してきた都市計画上の課題を詳らかにして、官民の連携や役割分担を可視化することにあると考えています。
そのため、盛岡の中心市街地を大きく「JR盛岡駅周辺」「大通・菜園」「内丸」「河南」の四つのエリアに分けつつ、さらに特性に応じた細分化を図り、下記の3点に留意して、業務を遂行しています。
①聞き取り調査など、民間と接触する機会においては、単に先方の感じている都市計画行政に対する不満や事業アイデアを聞くだけでなく、行政側の考えていることも伝えた上で、活発な意見交換を行える場とすること
②聞き取り調査や取りまとめの報告などの場には、まちづくりに関わるキーパーソン、住民等にも参加してもらい、過程から広く公開し、盛岡市の姿勢を周知・啓発するための機会とすること
③成果物では行政が考えるビジョンやルールのみならず、民間のポテンシャルや開発・更新・運営など、エリアごとの官民連携の可能性にも言及し、官民双方が次の一手を考えて実行していくための基礎とすること
なお、民間まちづくり組織の立ち上げを検討している地区もあるため、今後はマチビトキタルのプラットフォームを活用した組織の設立と人材の確保などにも着手していくこととなるため、今後の発信にもご注目下さい。

臂 徹
都内の建設コンサルタント会社で、友人曰く「魂を削りながら」働いていましたが、東日本大震災を契機に、被災地での計画策定や調査業務の傍らで、まちづくり組織の設立に携わる中で、官民の間で仕事をするやりがいを覚え、今は都市や不動産、各種デザインに関わる5つの会社を経営し、地方都市の中心市街地の再生などに取り組んでいます。